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所在地;栃木県足利市名草上町 
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足利の地は関東地方でも最も早く発達した地域の一つとされ、縄文・弥生
の古代から多くの人々が集落をなしていた。 後に足利地方で発祥し覇を
となえた足利氏は、その幕府をつくり、足利時代という歴史を形成した。

 さらに時代を遡ると、足利市は今から約2億年前までは海底にあった。
 地球内部の活動が盛んであった約1億年前、マグマの盛り上がりが現れ,
長い年月をかけてゆっくり冷えて大きな塊の石になった。 これが名草地方
他に産出する花崗岩で、
時間の経過と共に自然に割れて大きな石がいくつ
もでき、それらが重なって名草の巨石群となった。
 
   名草の巨石群は足利市街地の北方約10Kmの地点にある。元々は直径
1.5Kmの巨大な花崗岩で、長年の風化により方状節理に沿って四角の
立方体に割れ巨石群として分布する結果となり、さらに長い年月の間に角
が取れて丸くなった。学術的には、粗粒花崗岩が方状節理に沿って玉ねぎ
状に風化し水に洗われた核心部分が球状に残り巨岩を積み重ねた形に
なったと説明される。
このような特有の風化現象を示す貴重なものとして昭和
14年に国の天然記
念物に指定されている。
 
    だがこの地はそれだけに留まらず、人間の精神活動の舞台となった。 
巨石群は位置的には
2個所に分かれている。  人々の集落に近い方の巨石
群は,足利七福神のひとつとして名草弁才天が祭られた厳島神社となって
いる。
巨石の下部から水が湧き出していて、参道の傍らを小川になって流れ下る

  伝説によれば、名草弁天は9世紀に空海上人(後の弘法大師)が農耕
に必須の水源の守護神として弁財天を祀ったのが起源と伝えられる。
白い大蛇の案内によって清水の流れる巨岩の前に出た大師は岩の前に座
り経文を唱えて弁財天の降臨を招請し祠を建てたと云う。元々はここから水
が湧き出して名草を潤していた。
 
   
 
足利市史は「元来は巨石自体が信仰対象であったようである。」 さらに 
「弁財天そのものの信仰より巨石に対する愛着の心が名草の人々に共通し
ていると思われる。弁天信仰以前に、豊作をもたらすものとしての素朴な信
仰心がこの巨石群に寄せられていたのではないかと思われる。」
と述べているが、まったく同感である。

  

 

 胎内くぐり 
  境内には高さ11m余の巨大な組石状の御供石があり、その下に形成
された洞窟は胎内くぐりとして子孫繁栄や安産の祈願が出来るようになって
いる。また、弁慶が真二つに割ったとされる弁慶の割り石は明らかに一枚岩
が二つに分割されている。

 「続・足利の伝説」は、「昔の人が大力無双の弁慶でもなければ、こんな大
きい石を割ることはできないだろう」などと話し合ったのが、誤伝となったの
だろう。」と述べている。

この手の伝説は他の地方でもみられる。
  
弁慶の割り石
     厳島神社から約300m離れたところに形成された巨石群は「奥の院」と
され、「石割楓」、「御船石」等の巨岩たちが重なり合っている。
 御船石の上には小さな石作りの祠が立てられている。 これは元禄時代
17世紀)に当時の領主による建立で、弁天さまの本宮だったといわれる。
(「続・足利の伝説」)
  この奥の院の巨石群の山側の端の下部へ山の湧水が流れ込んでいる。
そして厳島神社境内の巨石群を通過して参道の小川となり、現在も名草の
地を潤しているようだ。

 水の神・弁財天は現在もこの大地を守護されているのだろうか。
 
参考文献 

 現地説明板 
 台 一雄著「足利の伝説」
 台 一雄著「続・足利の伝説」
 足利市史編さん委員会編「近代足利市史第
1巻」
 足利市史編さん委員会編「近代足利市史第2巻」
 

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