巨石と
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所在地;和歌山県新宮市神倉 
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 和歌山県南部と三重県南部に広がる熊野地方は神話や伝説を含む、古代史の舞台である。神話・伝説と古代歴史とは必ずしも一致するものではないが、遠い昔の史実を踏まえて神話ができあがったと仮定すると、確かに熊野には古代の出来事の痕跡が多く残されている。ごとびき岩は新宮市街を見下ろす神倉山に鎮座する神倉神社の神体石つまり磐座である。新宮市街から遠くに仰ぎ見ることができる。
 登り口の鳥居をくぐり、自然石を組み合わせた急な階段を五百段ほど登っていく。
 この石段は12世紀に源頼朝が寄進したと伝えられ、自然石を適宜組み合わせて構築されており、寸法や形は一定しておらず、極めてバラエティに富んでいる。各部分は好き勝手に配置されているようでいて、全体として奇妙にまとまっているところが見事である。
 
 やがて、巨岩と社殿とがうまく融合している聖域に至る。その境内で社殿を背にすると海と新宮市街の絶景が一望できる。
 「ごとびき」とはひきがえるの意であるが、堂々たる迫力で仰ぎ見る人に迫って来る。
 不思議なことに、拝殿の向きが岩に対して斜めに立てられているので参拝の方向は岩の正面からずれることになる。拝殿正面に向かって参拝してから少し右に向きを変えてこの巨岩を正面に見て再度参拝してみる。巨岩の迫力の大きさを緩和するように拝殿が建てられているのだろうか。   
 

 ここには人々が頻繁にお参りに訪れる。岩に降臨するという神に対して、それぞれの願いを祈願する。上まで登って来られないお年寄りは麓の鳥居の元で参拝している。
 神倉神社は天照大神と高倉下命を祭祀する。全国に数千社もある熊野神社の総本宮である熊野速玉大社の摂社であり元宮である。吉田岩蔵・著「祀られる神々 古代史の中の神社を行く」には、「・・・・・ここはもとは速玉神社が祭られていたが、速玉社が現在の地に鎮まりまして、この神倉山の社殿は摂社となったという。」と記されている。
 高倉下(たかくらじ)の命は農業、漁業の守護神とされる。  

 
    ここに伝わる伝承は主に日本書紀に由来するようだ。
 神倉山は、神武天皇が東征の際に登った山で、日本書紀には次のように書かれている。「・・・・・佐野を越えて、熊野の神邑(みわのむら、)に至り、天磐盾(あまのいわたて)に登った。軍を率いてだんだん進んでいった。・・・・・」神邑が今の新宮市、天磐盾が神倉山のことである。(宇治谷孟著・「全現代語訳・日本書紀」)
 さらに、同書の次の項を要約すると、「・・・・・皇軍はまた振るわなかった。するとそこに、熊野の高倉下という人がいた。・・・・・高倉下命は、神武天皇に「フツの御魂」という天から下ろされた太刀を献上した。 これを得た神武は、天照大神の遣わした八咫烏の道案内で軍を進め、熊野および大和を制圧した」と伝承されている。
 
 

人々の信仰の対象となる岩は全国各地に数多く分布しているが、古い神社に静かに佇んでいるか、あるいは人里離れた山中に、忘れられたように、人知れず祭祀されているものが多く見受けられる。だが神倉神社のこの巨岩は、常に市中の人々に崇められ親しまれて存在しているようだ。人々のごとびき岩に対する崇敬の想いは古代から連綿と受け継がれているのだ。

 

 

参考文献;

 

現地説明板
新宮市・編纂兼発行「新宮市史」
宇治谷孟著・「全現代語訳・日本書紀」(講談社)
上野元・著「熊野速玉大社の御由緒」(熊野速玉大社)
吉田岩蔵・著「祀られる神々 古代史の中の神社を行く」(西田書店)

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