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所在地; 鳥取県東伯郡湯梨浜町羽衣石
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 伯耆国(ほうきのくに)とは現在の鳥取県米子市、倉吉市そして東伯郡、西伯郡、日野郡などを含む地域であるが、
羽衣石城
(うえしじょう)などの史跡の数々に注目すると、現在でも伯耆の国と呼ぶのが相応しいような気分になる。

 じじつ、倭文神社(しとりじんじゃ)は伯耆国一宮とされる。又、西伯郡には伯耆町という地名まである。
羽衣石(はごろもいし)は羽衣石(うえし)という地区にある。詳しくは鳥取県東伯郡湯梨浜町羽衣石である。
 
  鳥取県の日本海沿岸に沿って国道
9号線が東西方向に走っているが、泊東郷ICから県道22号線、倉吉街道に入って
南下する。
東郷湖の南端部を回り込んでいくと羽衣石川と直交するがそこから県道を逸れて羽衣石川に沿ってさらに南下
して行くと
羽衣石城址の麓に到着する。
 羽衣石山は標高380m、頂上は平坦で広く、1366年南条貞宗によって羽衣石城が築かれたが、当時の武将らの覇権争い
の舞台となり、尼子経久の伯耆侵攻などによって何度も落城した。尼子氏が衰退し毛利元就の勢力が大きくなると南条宗勝
が羽衣石城へ復帰した。その後も戦乱が続くが、南条元忠の代に勃発
した関ヶ原の戦いに参加した結果敗北し、羽衣石城
は廃城となった。
14世紀後半から16世紀末までの約230年の間南条氏の居城として歴史の荒波に揺れ続けた羽衣石城であった

    

 

さて、天女伝説の羽衣石は、徒歩で羽衣石城址に至る途上にある。
巨岩の下部に祠があることから、磐座として祭祀されていることが分かる。
天女のような神霊を祀るのかあるいは羽衣石山を守護する山の神を祀る
のかは定かではない。
説明板には天女伝説が語られる。即ち・・・・・
 「昔、この山に天女が降り、大石に羽衣を掛けて麓の池で入浴をしていま
した。そこへ山里の農夫が通りかかり、羽衣を持ち去ってしまいました。
天女はそれに気付き、羽衣を返してくれるよう願いましたが聞き入れて
くれませんでした。

天女は羽衣がないので天上に帰ることができず、やむなく農夫の妻となり
ました。

 
      後、二人の子供が産まれました。その子供に羽衣の隠し場所を聞き出
し、羽衣をまとって天に昇っていったと言うことです。子供は泣き悲しんで
太鼓と笛で音楽を奏で、天女を呼び戻そうとしましたが、ついに帰りませ
んでした。

その天女の降りた山を「羽衣石山(うえしやま)」、太鼓や笛を鳴らした山を
「打吹山(うつぶきやま)」(倉吉市)と呼ぶようになったと言われています。
羽衣石の下に天女の祠を祀り、毎年5月5日を祭日としています。」  
 
 天女羽衣伝説は有名な三保の松原だけではなく日本各地に伝えられる。いやそれどころか、美しい天女に憧れる人々の
心情を描く説話は世界に分布しているようである。

「因伯昔ばなし第5集」に、この地の天女羽衣伝説の数々を編纂し論評している。地元東郷町や関金町の民話を収録して
いるが、18世紀半ばに書かれた「伯耆民談記」が地元で語り継がれた民話等を集約した文献であるようだ。
羽衣伝説は細かい部分での相違はあるが、大まかには現地の説明板に集約されるとおりである。

「因伯昔ばなし第5集」の中から興味を引く部分を選び出してみる。
  ・・・・・ 羽衣の隠し場所としては、農夫が巨岩の下に隠し定期的に取り出しては見ていた、というのと、柩の中にあった
のを子供が見つけた、というのがあるが、何れにせよ天女は羽衣を取り戻して天に帰った、となっている。

また、二人の子供は姉妹で、お「倉」とお「吉」と云う名であったが母を追って打吹山に登り笛と太鼓を打ち鳴らした、その地
が現在の倉吉市となった。 ・・・・・

 一方で、比較的現実に近い説話も伝承されている。
・・・・・ 隠岐の国から海を越えて、天女にまがう美女が伯州にたどりついた。人々が羽衣と見誤った衣はじつは宮廷の女官
の着る高貴なもので、その主が天女のような美女であることを探しだした当地の有力者が、天皇の許諾を得て、その美女を
妻に娶った。生まれた子供が羽衣石城初代城主の南条貞宗になる。 ・・・・・

後者のエピソードの方がより現実的であって、いかにも事実のような気がする一方で、空想的な天女伝説も棄てがたい。
先述の「伯耆民談記」にも「天女降臨のこと、異説様々にして妖妄虚談に近し。」と冷静に述べている。


高さ十メートル強の巨大な羽衣石を前にして、天女羽衣伝説は果たして本当にあったことなのか、などと詮索するのは
ヤボというものか。

参考文献; 

現地説明板
デアゴスティーニ 「週刊日本の城#62
河本英明 編著 「羽衣石城南條氏盛衰記」
鳥取民話研究会編 「因伯昔ばなし第5集」 

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