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巨石磐座
探訪記
  
大土山の高天原 広島県の
巨石
磐座
 

 所在地;広島県安芸高田市甲田町上小原大土山

登山口
 
 登山口の案内板

  大土山憩いの森 
 大土山は安芸高田市の東部にあり、約10km四方の高原地帯で、その頂上は標高800m、三次市との境界に近い。おおよそ広島県の北部にあたる。三次市の市街から行く場合は、国道54号線から県道37号へ入って向原に向かって南下する。向原駅付近から県道29号を東進し、大土山入口から林道へ入って北上する。4km程で大土山憩いの森キャンプ場に着く。ここから登山道を登る
大土山登山道入口 
 
T字路から見る
 なだらかな登山道を行くと、30分ほどで開けた一帯に出る。そこは一種のT字路で左右に山道が通っている。左右とも登り勾配で、右側の遠方に大きな鳥居が見える。左も同様に高みに向かう遠方にやや小さな鳥居があり、その背後に巨石群が見える。そこは標高660mの中腹にあたる。
遥拝所 

右側の大鳥居一帯は広場で遥拝所になっており、その位置から小さく見える鳥居の向こうにある巨石群一帯の聖地を遥拝する自然の構造になっている。つまり、遥拝する高みにある聖地(本殿)を、相対する別のやや低い高み(拝殿)から拝するという古代の山岳祭祀の形態をとっているのである。むろん社殿などはない。

想起するのは同じ広島県の葦嶽山である。この山の巨石群は、かつて日本ピラミッド研究の先駆者・酒井勝軍氏によって発見されたが、葦嶽山を本殿とし、少し離れた鬼叫山が拝殿であると発表された。  

 
 

 巨石群のある方へ参道を登っていく。鳥居の手前に祭祀用の木製のテーブルと金属製の説明板がある。鳥居の向こうには、とくに大きな岩を中心にしてやや小さな磐が十個ほど分布している。

傍らの説明板によると、最大の岩に天照大御神、続いて猿田彦大神、豊受姫大神、天宇受賣命(アメノウズメの命)、弁財天女大神、他主要な神々が各々の巨石に祭祀されている。まさしく高天原神話に登場する神々が祀られている。 

 
   この巨石群には地元の言い伝えなどがあるものの、長いあいだ世に知られる事はなかった。それは一帯に杉や檜の巨木が群生していたことと相まって、地元の村々の間の農業に関する特殊な事情があったらしい。千畳岩と呼ばれる巨石周辺は大昔、神々の会議場であったと村人は伝えているという。  
   この古代発祥の巨石群の聖地が世に出たのは20世紀になってからである。広島市の医師で、国史研究家の栗原基氏(明治31年生まれ)は、日本の古代史を記述する古事記、日本書紀に登場する地名が、安芸国の各地の地名とぴったり符合することから、神話を歴史に還元するという大胆な説を展開する。

それが参考文献として挙げた、栗原基・著「新説 日本の始まり」である。

 
   栗原氏は地元で生まれ、若い頃から大土山の周辺に興味を持っていた。都築要・編「広島史話伝説」によると、医師である栗原氏は、国史について熱心な研究家であり、「日本書紀」に書かれた「素戔嗚尊安芸国の可愛の川上に降る」と云う記述から、高天原は可愛川(江の川)の上流にあり、との信念を持ち、付近の鷹ノ巣山から大土山を調査し、その中腹にある神秘的な巨石群を発見した。その周辺は、ある霊覚者によって「天照皇大神のご神跡を秘める地上の聖域である」と判定された。(同書)  
 

広島湾の水上に建つ赤い鳥居で知られる厳島神社には市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)が祀られているが、大土山周辺の地元に伝わる伝説は、市杵島姫命の出生地が当地である、と伝えている。それで同書は、市杵島姫命は天照皇大神の御子であるから当然首肯できる、と述べている。

 
 
比婆山 
比婆山イザナミ神の御陵 
  
 さて、栗原基氏の著書に戻ると、後に大和王権を作ったとされる天孫族の祖先は大陸から渡来し、製鉄に有利な土地を探し求めて安芸の国に到達し、そこに定住した。後に庄原市北方にある比婆山方面にも進出し、イザナギ、イザナミの世に大いに繁栄した。同書には、記紀神話の各エピソード即ち、天の沼矛による国生み、天照大神、月夜見神、スサノオ神の三貴神の誕生、などが歴史のように描かれる。そして迦具土神を生んだことによる体調の悪化(神話では火の神とされるがここでは奇形児)により比婆山の山深く籠ってしまい、そこが黄泉の国と呼ばれることになった、など我々の知る神話の世界を、歴史に還元する試みが記載されている。  
 神話の源流に歴史的事実があったとすると、時の流れと共に事実が伝説となり、さらに時間を経過するにつれてファンタジックな神話になってしまう、という経過を辿ると思われるが、その逆のプロセスを辿る大胆な試みがあってもかまわない。本書はその意味で大いに興味深い。
参考文献;   都築要・編「広島史話伝説」郷土史研究会
栗原基・著「新説 日本の始まり」S44年発行・講談社
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