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巨石磐座
探訪記
  
伊勢の鏡岩 三重県
巨石
磐座

所在地;三重県伊勢市宇治今在家町 


五十鈴川
 伊勢市は三重県南東部に位置し、2千年前倭姫命が天照大御神の鎮座地を求めて各地を旅した結果、この地に祀ったとされる。それが伊勢神宮で、昔も今も大勢の参拝者で賑わっている。

鏡岩は、伊勢神宮内宮の前を通り過ぎ、県道12号線を3km程五十鈴川に沿って南下した地点にある。 伊勢市中心部から内宮までは人々で賑わう市街地であるが、内宮を過ぎて県道12号線に入った途端に道幅が急に狭くなり、景色は急変し、林道のような景観になる。


五十鈴川 
   

県道にかかる仙人下橋から約500m進むと左方向に脇道がある。そこを下るとすぐに石碑の建つ狭い広場があり、そこに駐車する。そばには門を閉ざした旧家がある。そこから徒歩で五十鈴川にかかる橋を渡って対岸に出る。橋を渡りきってすぐ左側に細い道があり、五十鈴川にそって下流に向かう。道は大変荒れていて、猪が掘ったと思われる跡が所々にみられる。やがて、今にも折れそうな丸木橋を見て少しひるんだが、恐るおそる渡る。折れた灌木を踏んでさらに進む。

 

橋のたもとから約500m進んだと思われる所で、鏡岩と対面することが出来る。鏡岩といってもむろんなめらかな鏡面はない。岩は、いわばセクションに分かれていて、地表に露出したと思われる巨岩の上に木製の祠が建っている。その隣に圧倒的に巨大な岩があり、下に降りる石作りの古い階段を降りるとその麓に近寄ることができる。

古文献に尺貫法の寸法が載っておりそれを換算すると、高さ約6m,幅約15mとなる。江戸時代末期に書かれた「勢陽五鈴遺響」という伊勢国の地誌に「・・・平面ナル処アリ清浄明徹ニシテ鏡ノ物ヲ照ス如シ然レトモ石体悉ク照スニハアラス古俗山鏡ト称セリ・・・」とあり、これがこの名の由来になったとされる。   

同じく江戸時代後期の「伊勢参宮名所図会」にも「高さ二丈、横五丈ばかりの大石にて、谷川の方より西面を見れば、清浄明白、誠に磨ける鏡のごとし。故に山鏡といふ。鏡石社・石登宇社並びて二社あり。」とある。

   

「伊勢参宮名所図会」
 

原文は草書体で読めないであろうが、それぞれの復刻版がありがたい。古文献では岩の上に二社ありというが、現在はやや大きめの祠が一つ建っている。
「伊勢参宮名所図会」の中に鏡石と題したイラストがあり、 伊勢の深山の様子が細かく描かれ、その一角の鏡石の麓に数人の人が両手を拡げている。往時の参拝者であろうか、書物のタイトルからして、鏡石が伊勢参宮の一部になっていたと想像出来る。

  

 
「伊勢参宮名所図会」
   近代になってからは、鏡岩は学校の遠足の定番スポットで、宇治橋上流の「とび石」から川沿いに歩いた、と云われる。今はそのコースは難しいと思われるが、それはさておき、現状は観光の対象にはほど遠く、荒れ果てた道がかろうじて通じてはいるが、鏡岩は人々から忘れ去られ、鏡面もなくなり、ひっそりと佇んでいる・・・。

これも時代の流れであろうか。だが、重厚な巨岩の存在感は、古代も現代も変わることはない。

 

参考文献;

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安岡親毅(筆者注;江戸期の郷土史家)・著「勢陽五鈴遺響」
(昭和
50年復刻版) 三重県郷土資料刊行会・発行

日本名所図会刊行会・編集発行「伊勢参宮名所図会」(大正8年復刻版)

「伊勢志摩百物語 ~磐座の聖地巡り~」編集発行・皇學館大学 伊勢志摩百物語編集委員会

 
 
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