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巨石磐座
探訪記
  
最上稲荷・龍王山の巨石群 岡山県
巨石
磐座
最上稲荷の根源地

霊光殿
八畳岩の岩窟
 所在地;岡山県岡山市北区高松稲荷712
      最上稲荷は岡山市街地の西北約10kmの所にある。高速道路を利用する場合は、岡山自動車道の岡山総社ICを降りて国道180号線に入り吉備線の備中高松駅近傍の踏切を渡って県道を北上する。県道に入ってすぐにくぐる大鳥居が目印となる。さらに進み案内板に従って左折すると門前町に入る。そこからが龍王山の麓から頂上まで広がる最上稲荷の敷地である。  
 稲荷信仰といえば、誰もが連想するのが連続した赤い鳥居に、神の使いとされる狐の像などであり、「お稲荷さん」として、我々に身近な存在となっている。しかしながらその信仰形態は複雑多様で、神社だけでなく仏教寺院が神仏習合の形式をとって稲荷神を祭祀するだけでなく、特に一般の企業や個人がその敷地に祠を造って商売繁盛などを祈願する例も多い。  
   祭神も多様で、仏教的稲荷神の荼吉尼天(だきにてん)や、稲荷神社の祭神は親神としての稲荷大神の分神としてその名を変え、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)、保食神(うけもちのかみ)の他多数の神々がそれぞれの神社に祀られる。全国に約4万社ある稲荷神社の総本宮とされるのが京都の伏見稲荷大社である。  
 愛知県の豊川稲荷は曹洞宗に属する寺院であるが、同様に最上稲荷は、正式には最上稲荷山妙教寺と云う通り、仏教の流れを汲む神仏習合の稲荷社である。人々は、商売繁盛、交通安全、家内安全、身体健全、安産成就など生活に身近な願いを祈願する。とくに初詣では参拝者で大混雑するという。

妙教寺
 入口の山門の異様さにまず目を奪われる。インドイスラム建築様式によるとされる仁王門で、日本の仏教建築らしからぬその景観に違和感を禁じえない。右方に妙教寺があり、正面の立派な本殿(霊光殿)には巨大な注連縄が掛けられ、神仏習合を伺わせる。霊光殿には御本尊の「最上位経王大菩薩」(荼吉尼天)、「八大龍王」、「三面大黒天」が三位一体で祀られている。八大龍王は雨乞いの神としてこの地の信仰を集めてきた。  
   本殿の右側をとおり、旧本殿と赤いのぼりが目立つ77末社の区域に移動し、その一画から背後の龍王山へと登っていく。山一帯は聖なる神奈備信仰の霊地である。大森恵子・著「稲荷信仰の世界」には「最上位経王大菩薩は龍王山の山の神でもあり、祖霊神・龍神・水源神・池の神・水の神・農耕神・福の神・武神などの宗教的要因を示現する仏教的稲荷神として、人びとから信仰されてきたと考えられる。」と記載されている。  

題目岩
 さて、本稿の核心は、最上稲荷の発祥となった巨岩である。奥の院に向かう山道の中腹あたりに巨石群が見えてくる。参道わきに、巨石群を仰ぎ見るような位置に赤い鳥居と祠が設置されている。この一帯が最上稲荷の根源地とされる聖域である。見上げると、岩に仏像(法華経の守護神・鬼子母神)が浅く彫ってあり、その左の岩に字句が彫ってある。字句はお題目なので、岩にその名が付けられた。上方に、最上尊降臨の霊地・八畳岩とその岩窟がある。
8世紀の半ば、報恩大師が、孝謙天皇の病気平癒のため、八畳岩の岩窟に籠り、観世音菩薩普門品を唱えて祈願された所、最上位経王大菩薩のお姿を感得した、と云われる。ここが、最上稲荷発祥の根本霊場なのだ。岩窟へはさらに300mほど登って回り込む。八畳岩の上からは、下界の景色が良く見える。
 
鬼子母神像

八畳岩の岩窟
 
     
 

奥の院へ
 引き返してさらに登り続け、奥の院に向かう。石の鳥居をくぐりしばらくすると、道の両側に大きな石塚が多数並んでいる一帯があり、そこを通り抜けると奥の院一乗寺に着く。 

じつは奥の院へは、八畳岩から一旦下山したのち、車で行くことができる。だが、そうはしなかったのは、神奈備の山に対して礼を失すると思ったからに他ならない。

 
奥の院
 参考文献;   最上稲荷パンフレット及び現地説明板
大森恵子・著「稲荷信仰の世界」・・・慶友社
五来 重・著「稲荷信仰の研究」・・・山陽新聞社
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