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  所在地;兵庫県南あわじ市沼島
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沼島(ぬしま)は淡路島の南部から5kmほど離れた周囲約10kmの小島で、地図で見ると勾玉のような形をしている。現地の看板によると「・・・勾玉は誕生を意味している。この勾玉を三つ合せてデザインしたのが昔から日本の神社のシンボルマークである「三つ巴」。」と説明される。
南あわじ市灘地区の海岸線に沿って走る南淡路水仙ラインを辿ると、土生(はぶ)港に近づくにつれて沼島が目と鼻の先に見えてくる。土生港から連絡船に乗り約
10分の船旅を終えて沼島港に降り立つと、それまでいた淡路島とは違う、この島独特の爽やかな空気に包まれる。
 
  土生(はぶ)港 人口は630人ほどで、民家は沼島港周辺に密集しているが、港の周辺には造船所もあり、海の守護神として弁財天が海の方角を向いて祀られている。 少し奥に入ると豊かな山になる。最高地点は117.2mであるが、開けた所では海の展望が美しい。島をぐるりと巡る遊歩道が整備され、沼島全域に88ヶ所の石仏が点在しており、この島の人々の敬虔な信仰心が感じられる。
さて、この島は古事記神話に出てくるおのころ島であると伝承されている。そのためか島にはおのころ山があっておのころ神社が鎮座している。
沼島港に沿って歩くと、おのころ神社への案内板があって、神体山に国生みの神、イザナギ、イザナミの二神が祀られていると書かれている。
 
沼島港
18世紀末に祠が建てられ、大正年間に神殿が完成、今世紀に入って拝殿と石段の修復工事が実施され、イザナギ、イザナミの二神石像も建立された。 神話によれば、イザナギとイザナミのニ神は天つ神の命により天の浮橋にお立ちになり、天界から支給されたアメノヌボコを下界に下ろし、流れ漂う海と泥との混じる塩をコヲロコヲロとかき回して引き挙げたときに、ヌボコの先から滴り落ちた塩が重なり積もって島になった。これが日本の国土として最初に出現した、おのころ島であると伝えられる。  
そして二神はおのころ島に降臨し、天の御柱を立てた。そしてその柱の周囲を互いに左右逆方向に巡ってめぐり会った所でまぐわいして、日本国土の元になる島々を生んでいく。
 沼島にはその天の御柱があるという。沼島港から漁港に沿って海岸沿いを少し歩いた後、上立神岩なる案内板に従って民家の密集した細い道を辿りながら島の中央部を横断して行く。小学校と中学校を過ぎると道は上りになり山間に入っていく。峠を過ぎると急な下りになりすぐに海が見えてくる。沼島港からは30分ほどで島の反対側へ着く。  

 
 海岸は絶壁になっており岸へ降りることはできないが、高さ約30メートルの中央部が太く重厚で先端が尖った存在感のある美しい立石が海中に屹立している姿を見ることができる。
沼島には、イザナギとイザナミのニ神がこの上立神岩の周囲を巡ったという話が伝わっている。また、島全体を天の御柱として島の周囲を回ったという話と、上立神岩と対になる下立神岩のニ柱を巡ったという別の伝承も同時に存在する。
古代の出来事のある重要な部分は、当時は歴史的事実であっても、時の流れとともに伝説になり、さらに時が過ぎ行くといつしか神話となる。上立神岩と名付けられた巨岩は古代の出来事を記憶し、その証人として存在しているのだろうか。

古代神話は、おとぎ話のように空想的ではある。だがそれらのうち実際の出来事を源泉とするものは、その神話世界の伝承が現実世界の中に投影されており、その痕跡を辿ることができる。その投影される対象が巨石であることも散見され、それらを探訪する旅はじつに楽しい。

神話は現実世界の古代の出来事を反映した結果生まれたものであるとしても、現実には、一本の棒の先に付いた海水のしずくが滴り落ちて島になることはない。陸地がまだ出来てもいない所に天の浮橋という橋が架かっているはずがない。しかしながら、古代神話は現実離れした分だけ余計に、我々の感性をストレートにくすぐるのかもしれない。だからこそ現代に至るまで、多くの神話が語り継がれてきた。
寺林峻・著「(ひょうごの神々を追う)・天の浮橋」の中に、淡路島の神職の方が語ったこととして、「天の浮橋というのは船のことで、アジアの先進地の人々が海を渡って福良から上陸して国土を開拓していったのがイザナギ・イザナミの神話となったのでしょう」とある。さらにイザナギ・イザナミの両神はこの世に実在した人類の祖であったと見ている。

このようにして、神話世界と現実世界との接点が存在するのだ。

 参考文献;

三浦佑之・著「口語訳 古事記」
岡本稔・著「淡路の神話と海人族」
井津尾由二・著「国生みの島と海人」
前川正夫・編集発行「おのころ島物語」
寺林峻・著「(ひょうごの神々を追う)・天の浮橋」

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